日本語の発音はどう変わってきたか その2

 昨日に引き続き、「日本語の発音はどう変わってきたか」中公新書を読んでの話です。


 去年の大河ドラマは、鎌倉殿の13人、そして、来年は、光る君へ、だそうです。源氏物語、紫式部ですから11世紀初頭の話ですね。


 源氏物語が書かれたのは1008年頃とされています。そこから200年ほど後、つまり、鎌倉殿の13人の最終回の頃、藤原定家はちょっと困っておりました。それは、その頃になると日本語の発音が大きく変わってしまったからです。ハの音でいうと、カハ(川)は、源氏物語の頃には、そのままカハと発音していたのが定家の時代にはカワとなっていました。語中語尾のハがワに変わったのでした。


 源氏物語をはじめ枕草子などの、いわゆる王朝文学は読めなくなってしまいました。というのは、ほとんど平仮名だけで書かれていたからです。「どうする定家」という状況です。そこで定家は仮名遣いの違いについて「下官集」という書物にまとめました。
 とはいえ、この当時は写本で読むしかなかったわけです。写本がどのくらい作られていたか分かりませんが、私の考えでは、王朝文学を読むことができたのは、全国でせいぜい百人くらいしかいなかったと思われます。そういう、ごく狭い範囲の人に向けて定家は仮名遣いの手本を示そうとしたのですね。


 もっとも、大河ドラマでは台詞はほぼ現代語で話すので、紫式部も「絶対、そうだよ」とか言うんでしょうね。
 因みに、現在、私たちが目にする王朝文学は、漢字を混ぜて表記し、会話を「」で括って読みやすくしてあります。そうでした、絶対は明治になって作られた言葉でした。ヤバい間違い。